阿修羅

2009年06月17日 水 14:13

「アイドルだ」。まだ早い時間なのに、行列ができている。想像以上の込み具合。まるでアイドルが目当てのようだ。ファン層はわりと年配のおばさん。日差しが強かったため、日傘が用意されていた。それを見ても、客層がわかる。
私たちは今人気の美青年、阿修羅様に会いに上野まで行ってきた。
しばらく待って、ようやく会場に入れたが、中はすし詰め状態。背の低い私には、何が置いてあるかが少しも見えない。その上、後からおばさんが押してくる。列が動いていないのに、押されてもどうしようもないよと思い、序盤から心が折れそうになった。
そこに、係員からの救いの言葉。「再入場できますので、先の展示から見ていただくこともできます」。なんだなんだ、それならすいているところから見ていこう。
「顔が小さいね」。開けたところに、ひとりで立つ彼は、確かに美形だ。スタイルも良い。スラリとのびる長い六本の腕に、複雑な表情を浮かべる三つの顔。背は意外と小さい。
正面から後ろの方へぐるりと回って見ていくと、角度によって表情が変わる。普段は、ケースの中にいるので、なかなか見られない顔だ。最初は怒り、次は悲しい顔。そして、正面へ戻ると微笑んでいた。どこから見ても、微笑みの表情はないと思っていた。苦しい顔ばかりだと思っていたので、あの顔には釘付けになった。
少しだけだが雑誌とテレビを見て予習してから行ったことが見るための助けになったようだ。何も知らないまま行ったら、見入ることはなかっただろう。
きっと、仏像が好きになると、知らないことだらけなので、いくらでも楽しめそうだ。見終わった後の、すがすがしい気分もなんとも言えない。それは、アイドルを追っかけて得る気持ちよさと似ているのかもしれない。

 

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